基本情報の経済的発注量は、1回に何個発注すれば、発注にかかる費用と在庫を持つ費用の合計が最小になるかを求めるものです。基本形の式は「経済的発注量=√(2×年間需要量×1回の発注費用÷1個あたりの年間在庫維持費用)」です。まず費用の単位をそろえ、年間発注回数と平均在庫へ分けると、式の意味まで理解しやすくなります。
この記事では、独自の例題を使い、公式への代入、年間費用の比較、平均在庫、発注点との違いまで順に確認します。需要量・費用・保管条件は計算練習用の架空の設定です。実際の企業の費用率を示したり、特定の数量を実務へそのまま勧めたりするものではありません。
- 年間発注費用は年間発注回数と1回の費用の積で求める
- 基本モデルの平均在庫は1回の発注量の半分になる
- 年間需要と1個あたり年間費用の期間・単位をそろえる
- 経済的発注量の「何個」と発注点の「いつ」を区別する
基本情報の経済的発注量と年間費用を整理する

経済的発注量は合計費用を最小にする量
経済的発注量はEOQ(Economic Order Quantity)とも呼ばれます。1回の発注量を大きくすると、同じ年間需要を少ない回数の発注で賄えます。その一方で、入荷後に持つ在庫が多くなり、在庫を維持する費用は増えます。この二つの費用の釣り合いを考えます。
「発注回数が最も少ない量」や「倉庫の在庫が最も少ない量」を単独で求める問題ではありません。大量にまとめれば常に得、少しずつ買えば常に得、ともなりません。何を最小にするかを、年間発注費用と年間在庫費用の合計に固定しましょう。
ここでは、需要が一定で、毎回同じ数量を一括で補充し、在庫切れは起こさず、数量による購入単価の変化もない基本モデルを使います。まず安全在庫は0とし、在庫は入荷直後のQ個から0個まで一定の速さで減り、0になった時点で次が入荷する設定です。
発注から届くまでの時間があっても、必要な分だけ早く発注して同じ補充の流れを保つと考えます。後半では発注点を別に計算します。需要の大きな変動、品切れの損失、数量割引、倉庫容量などの追加条件があるなら、基本式だけで実行する量を確定できるとは限りません。
基本的な費用と発注量の関係は、厚生労働省の製造業ITマイスター指導者育成プログラム教材の「在庫費用と発注量」でも示されています。この記事では、費用の意味を自分で計算できるように、独自の条件で式を組み立てます。
年間発注費用は発注回数から求める

年間需要量をD、1回の発注量をQ、1回あたりの発注費用をSとします。単位はそれぞれ、個/年、個/回、円/回です。記号は資料によって異なるため、文字そのものよりも「年間の量」「1回の量」「1回の費用」を区別してください。
年間発注回数はD÷Qです。例えば、年間4,800個を使い、1回に240個ずつ補充するなら、4,800÷240=20回/年となります。1回あたりの発注費用が1,200円なら、年間発注費用は20×1,200=24,000円/年です。
式では、年間発注費用=(D÷Q)×Sです。1回の発注費用には、問題文で指定された発注手続や受入れ等の費用を使います。商品そのものの購入代金とは分けます。「1回の発注で1,200円」と「商品1個を1,200円で購入する」は、掛ける回数も数量も違います。
年間需要量を固定したままQを2倍にすると、年間発注回数は半分になります。Sが一定なら年間発注費用も半分です。小口で頻繁に発注するほど、このモデルでは発注のたびにかかる費用が増えます。
端数が出る場合も、問題がどのモデルを指定しているかを見ます。基本式のD÷Qは平均的な回数として扱うことがあります。一年だけを区切り、発注回数を整数にし、期首・期末在庫まで計算する設定なら、その条件を反映する必要があります。本稿の主要な数量例では、需要量を割り切れる値を使います。
年間在庫費用は1個あたりの費用を使う

1個を1年間保有するための在庫維持費用をHとします。単位は円/個・年です。平均在庫が100個、Hが200円/個・年なら、年間在庫費用は100×200=20,000円/年になります。Hそのものを、在庫全体の年間費用と読み違えないようにします。
問題によっては、「年間在庫維持費用」「年間保管費用」などの名前で与えられます。どこまでの費用を含むかは、その設問の定義に従います。実務の相場を思い出して、与えられたHへ別の費用を勝手に足す必要はありません。
購入単価Pと年間の在庫維持費率iで与えられる場合は、H=P×iとします。例えば、Pが1,000円/個、iが年20%という仮定なら、H=1,000×0.20=200円/個・年です。20%は20ではなく0.20へ直します。
ここで購入単価1,000円を、そのままHに入れないでください。Hは商品を買う費用ではなく、その商品1個を一定期間保有するための費用です。また、Hがすでに200円と示されているなら、費率をもう一度掛ける必要はありません。
Hが年単位か月単位かも確認します。1個あたり月20円という条件なら、同じ費用が毎月かかるモデルで年240円です。年間需要量と組み合わせるなら年へ換算し、月間需要量で考えるなら保管費用も同じ月単位にそろえます。
平均在庫が発注量の半分になる理由

安全在庫0の基本モデルでは、在庫はQ個から0個へ直線的に減ります。最大と最小の中間が平均なので、平均在庫は(Q+0)÷2=Q÷2です。1回240個を入荷するなら、平均在庫は120個になります。
これは「年間に発注する総数量の半分」という意味ではありません。年間需要が4,800個でも、240個ずつ入荷して使い切るなら、その繰り返しの平均は120個です。4,800÷2=2,400個は、全需要を一度に入荷して0まで減らす別の補充方法に相当します。
また、平均在庫120個を発注回数20回で割り、6個とするのも誤りです。Q÷2は一つの補充周期の時間平均で、同じ周期を繰り返しても平均は変わりません。年間在庫費用は、平均120個を1年間保有するものとしてHを掛けます。
安全在庫Bを常に残す設定に変えた場合は、在庫がQ+BからBまで減るので、平均はQ÷2+Bです。Qが240個、Bが40個なら、最大280個、最小40個、平均160個となります。安全在庫が加わったからといって、発注量240個自体を280個へ読み替えないでください。
一定の安全在庫BがQと無関係に決まっているなら、その年間費用B×HはQによらない一定額です。その条件では、Qを選ぶ基本の釣り合いは変わりません。ただし、安全在庫の設定や保管容量まで同時に最適化する問題には、この結論をそのまま広げないようにします。
二つの年間費用を等しくして公式を得る
安全在庫0の年間費用C(Q)は、C(Q)=D×S÷Q+Q×H÷2です。左の項が年間発注費用、右の項が年間在庫費用です。Qが小さいと左が大きく、Qが大きいと右が大きくなります。両方の和を最小にするQを探します。
この基本モデルで数量を連続した正の値として選べるとき、最小になる点では二つの費用が等しくなります。D×S÷Q=Q×H÷2と置き、両辺に2Qを掛けると2DS=HQ²です。したがってQ²=2DS÷H、正の平方根を取ってQ=√(2DS÷H)となります。
式の平方根の中が、そのまま発注量ではない点に注意してください。また、2は分子にあります。丸暗記の配置が曖昧になったら、年間発注費用と年間在庫費用の等式へ戻ると、分子と分母を再確認できます。
最小化の式と費用が等しくなる関係は、放送大学の「問題解決の数理」の在庫管理講義資料でも確認できます。同資料では、一定需要のモデルから保管費用と発注費用を組み立てて説明しています。
購入単価Pが数量で変わらず、年間需要Dも一定なら、年間購入費用はD×Pで一定です。これを総費用へ加えても、どのQが最小かは変わりません。ただし、数量割引でPが変わるなら購入費用も比較対象です。「購入費用はいつでも無視できる」と覚えるのは避けましょう。
管理する品目の重要度を分類する話と、1回の数量を決める話も分けます。売上や年間使用金額で重点管理の対象を選びたい場合は、基本情報のABC分析と累積構成比を参照できます。ABCの区分だけから、EOQの数量が直接決まるわけではありません。
基本情報の経済的発注量を例題で計算する

需要量と費用を代入して年間費用まで出す
次の架空の部品について、経済的発注量と年間費用を求めます。年間需要量D=4,800個、1回の発注費用S=1,200円、1個あたり年間在庫維持費用H=200円です。需要は一定、一括補充、欠品なし、数量割引なし、安全在庫0とします。
| 記号 | 与えられた値 | 意味 |
|---|---|---|
| D | 4,800個/年 | 1年間に必要な数量 |
| S | 1,200円/回 | 発注1回にかかる費用 |
| H | 200円/個・年 | 1個を1年間保有する費用 |
| Q | 求める値 | 1回に発注する数量 |
平方根の中は、2×4,800×1,200÷200=57,600です。240×240=57,600なので、Q=√57,600=240個/回となります。平方根を取る前の57,600個と答えたり、求めた240を年間発注回数として答えたりしないようにしましょう。
年間発注回数は4,800÷240=20回/年、平均在庫は240÷2=120個です。年間発注費用は20×1,200=24,000円、年間在庫費用は120×200=24,000円。合計は48,000円/年になります。
この48,000円には購入代金を含めていません。仮に単価が1,000円なら、年間購入代金4,800,000円は別です。両方を含める総額を問われた場合は4,848,000円ですが、発注費用と在庫費用の合計を問う問題なら48,000円を答えます。設問がいう「総費用」の範囲を確認してください。
検算では、年間発注費用と年間在庫費用が一致するかを見ます。この例は制約のない基本モデルの最適量をそのまま使えるので、両方24,000円になるはずです。片方だけ極端に大きければ、Qの半分を使い忘れた、SとHを取り違えた、平方根を取り忘れた可能性を確認します。
単位でも確かめられます。D÷Qは(個/年)÷(個/回)なので回/年、これに円/回を掛けて円/年です。Q÷2は在庫として見る個数で、円/個・年のHを掛けると同じ円/年になります。同じ期間の費用になっているから、二つを合計できます。
候補数量を比較して費用の変化を確かめる

公式だけに頼らず、同じ条件で1回の発注量を変えてみましょう。D=4,800、S=1,200、H=200を固定し、Qを120個、240個、480個とします。年間需要はどの案でも同じで、発注量だけを変更します。
| 1回の数量Q | 年間回数D÷Q | 年間発注費用 | 年間在庫費用 | 合計費用 |
|---|---|---|---|---|
| 120個 | 40回 | 48,000円 | 12,000円 | 60,000円 |
| 240個 | 20回 | 24,000円 | 24,000円 | 48,000円 |
| 480個 | 10回 | 12,000円 | 48,000円 | 60,000円 |
120個から240個へ増やすと、発注費用は半分、在庫費用は2倍になります。この範囲では発注費用が減る効果の方が大きく、合計は下がります。さらに480個へ増やすと在庫費用が大きくなり、合計は再び上がります。費用の片方だけを見て選ばないことが大切です。
120個と480個の合計が同じでも、同じ運用ではありません。前者は頻繁な発注、後者は多い平均在庫という異なる負担があります。二つの年間費用が等しくなる240個では、その合計が最も小さくなっています。
条件が変わったときの方向も、式から確認できます。他が同じなら、Dが4倍になるとEOQは2倍、Sが4倍でも2倍、Hが4倍になると半分です。平方根の関係なので、年間需要が2倍になったからEOQも2倍、とはなりません。
ただし、この変化は基本モデルの比較です。発注量を増やすと発注1回の費用S自体も変わる、単価が割引になる、保管スペースが足りない、といった条件が追加されたら、そのまま比例関係を当てはめず、変更後の費用を確認し直します。
発注点は届くまでの消費量から考える

経済的発注量は「1回に何個頼むか」です。一方の発注点は、「在庫がどこまで減ったら頼むか」という補充を始める基準です。どちらも個数で表されることがありますが、答えている問いが違います。EOQの240個を、そのまま発注点へ使わないでください。
単純な定量発注の設定では、発注点=1日あたりの平均消費量×調達期間+安全在庫です。発注してから届くまでにも在庫を使うため、その間の見込み消費量を残した段階で発注し、安全在庫も残せるようにします。
先ほどの年間需要4,800個を、年間240営業日で一定に使うとします。1営業日の消費量は4,800÷240=20個。調達期間を3営業日、安全在庫を40個と与えるなら、発注点は20×3+40=100個です。この例では、在庫100個の時点で240個を発注する、という二つの判断になります。
発注後の3営業日で60個を使うため、入荷直前には40個が残ります。そこへ240個が一括入荷し、手元在庫は280個になります。最大280個、最小40個なので、平均は160個です。発注点100個を平均在庫として計算しないようにします。
この安全在庫を常に残す単純な条件では、年間在庫費用は160×200=32,000円、年間発注費用は24,000円なので合計56,000円です。安全在庫0の48,000円との差額8,000円は、40個×200円で説明できます。一定の安全在庫分を、発注回数にも重ねて掛ける必要はありません。
発注点と調達期間、安全在庫の関係は、先ほどの放送大学の在庫管理講義資料の定量発注方式でも示されています。日数を使う問題では、消費量も同じ日単位にそろえます。本例の営業日を、途中で暦日へ置き換えないでください。
ここでは、発注時に先の発注残がなく、調達期間も一定で、在庫を続けて確認できる単純な例を扱っています。複数の発注が未入荷で残る設定などでは、手元在庫だけでなく、問題文が指定する発注残等の扱いも確認します。条件が複雑になったら、基本の100個という例をそのまま流用しないようにしましょう。
数量制約と単位を確認問題で見直す

公式の答えが、そのまま発注できる量とは限りません。先ほどの基本例に「100個単位でしか発注できない、安全在庫なし、最大保管量300個」という条件を加えます。EOQは240個ですが、実行できる候補は100個、200個、300個です。
| 発注量 | 年間発注費用 | 年間在庫費用 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 100個 | 57,600円 | 10,000円 | 67,600円 |
| 200個 | 28,800円 | 20,000円 | 48,800円 |
| 300個 | 19,200円 | 30,000円 | 49,200円 |
候補の中では200個が最小です。240を四捨五入した結果だけに頼らず、候補ごとの年間費用を比較してください。制約付きの最小案では、年間発注費用28,800円と年間在庫費用20,000円は一致しません。費用が等しくなるという検算は、制約のない最適量へ適用する関係でした。
保管量に安全在庫が含まれる条件なら、保管上限とQだけを比べるのも不十分です。一定の安全在庫Bがある本稿の一括補充モデルでは、入荷直後はQ+Bとなります。上限が300個でBが40個なら、Qは260個以下かを確認します。
次の独自問題で、公式・期間・発注点をまとめて確かめてみましょう。いずれも需要一定、一括補充、数量割引なしの基本モデルです。各問は独立しており、指定のない前問の条件を引き継がないものとします。
- 問1:D=3,600個/年、S=1,250円/回、H=100円/個・年、安全在庫0のとき、EOQと年間の二費用の合計を求める
- 問2:問1の条件でHだけが400円/個・年になったとき、EOQは何個になるか
- 問3:年間需要1,200個、Hが1個あたり月20円、S=1,000円/回のとき、EOQを求める
- 問4:1営業日の消費量15個、調達期間4営業日、安全在庫30個なら、発注点を求める
問1は、√(2×3,600×1,250÷100)=√90,000=300個です。年間発注回数は3,600÷300=12回、平均在庫は300÷2=150個になります。公式で出た値と、次に計算する回数・平均在庫を混同しないようにします。
問1の年間発注費用は12×1,250=15,000円、年間在庫費用は150×100=15,000円なので、合計30,000円です。両者が等しくなることも確認できます。端数が出る別の問題では、途中で丸めず、最後に設問の指定へ合わせます。
問2はHが4倍なのでEOQが半分になり、150個です。問3はHを年240円へ直し、√(2×1,200×1,000÷240)=√10,000=100個です。月20円をそのまま使うと、年間需要との期間がそろいません。
問4は15×4+30=90個です。EOQを求めるD・S・Hがなくても、消費量・調達期間・安全在庫があれば、この単純な発注点は計算できます。何の個数を求めるのかを先に決めることが、不要な数字を使わないコツです。
まとめ:基本情報の経済的発注量の解き方
経済的発注量では、年間発注費用=(年間需要量÷1回の数量)×1回の発注費用、年間在庫費用=平均在庫×1個あたり年間維持費用と分けます。安全在庫0なら平均在庫はQ÷2で、二つの費用の合計を最小にする量が√(2DS÷H)です。
公式へ代入する前に、需要と費用の期間、1回と1個の違い、購入費用を含めるかを確認してください。発注点は「いつ」、EOQは「何個」です。最後は年間の二費用と候補数量を計算し、制約も反映して答えれば、公式を暗記するだけより確実に見直せます。


コメント