基本情報の標準偏差は、データが平均のまわりにどれだけ散らばっているかを表す値です。求める順序は、平均を出し、平均との差を二乗して平均し、最後に平方根を取る、となります。途中の「分散」で止まらないことが大切ですね。
また、すべてのデータに同じ数を足しても標準偏差は変わらず、すべてを2倍すると標準偏差も2倍になります。この記事では、その理由を小さなデータで確かめ、分散との違い、度数表の計算、値を加工する問題の見分け方まで整理します。以下の数値は解説用に作成した例で、実測値や実際の試験問題ではありません。
- 平均が同じデータでも散らばりを比較できる理由
- 偏差を二乗して分散を求め、平方根で標準偏差に直す手順
- 全件への加算・倍率変更で平均と散らばりがどう変わるか
- 度数の数え忘れや一部の値だけを変える問題の注意点
基本情報の標準偏差と分散の求め方

平均が同じでも散らばりは違う
平均値だけでは、個々の値がどれほど違うかまでは分かりません。たとえば、ある処理を4回測った時間が、Aでは8、8、12、12ミリ秒、Bでは6、6、14、14ミリ秒だったとします。どちらも合計40を4で割るので、平均は10ミリ秒です。
しかし、平均10からの離れ方は異なります。Aはどの測定も平均から2ミリ秒だけ離れ、Bはどの測定も4ミリ秒離れています。同じ平均の処理でも、Bの方が測定結果の散らばりが大きいと分かります。この違いを数値で示すのが分散や標準偏差の役割です。
| データ | 4回の処理時間(ミリ秒) | 平均 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|
| A | 8、8、12、12 | 10ミリ秒 | 2ミリ秒 |
| B | 6、6、14、14 | 10ミリ秒 | 4ミリ秒 |
総務省統計局の統計用語辞典でも、標準偏差は平均を中心とした散らばりを示す指標と説明されています。値が大きいほど散らばりが大きく、0ならすべての値が同じです。平均からの距離をまとめた値なので、最大値と最小値の差そのものではありません。
比較するときは同じ単位・同じ種類のデータで見るのが基本です。秒で表した標準偏差とミリ秒で表した標準偏差を、そのまま数字の大小だけで比べると誤ります。また、標準偏差が小さいだけで処理性能全体が優れているとは決まりません。平均時間や測定条件も一緒に見て、散らばりが小さいという範囲で読み取りましょう。
偏差と分散を区別する
各データから平均を引いた値を偏差と呼びます。平均より小さければ負、平均より大きければ正になります。Aの8、8、12、12に対する平均は10なので、偏差は−2、−2、2、2です。ここで「平均との差」とは符号を残した差を指し、絶対値ではありません。
偏差をそのまま足すと、−2−2+2+2=0になります。これはAだけの偶然ではありません。各値から同じ平均を引いて全件分足すと、データの合計から「平均×個数」を引くため、必ず0になります。0になる偏差の平均では、散らばりの大小を表せません。
そこで、偏差をそれぞれ二乗してから平均します。この値が分散です。二乗すれば正負が打ち消し合わず、平均との差が大きい値ほど大きく反映されます。Aでは偏差の二乗がすべて4なので、分散は(4+4+4+4)÷4=4となります。
一方、偏差の絶対値を平均すると別の指標になります。Aのように全件が同じ距離の例では標準偏差と一致しても、一般には同じではありません。「負を消すなら絶対値でもよい」と手順を置き換えず、分散では二乗を使う、と区別してください。

分散を求める式は「分散=(偏差の二乗の合計)÷データ数」です。統計局の記述統計量の解説にある定義を使っています。記号で書く場合のΣは全件分を足す指示、nはデータの個数です。記号の見た目に迷ったら、各データを一行ずつ並べて計算すると対応を確認できます。
平方根を取って元の単位に戻す
分散は偏差を二乗しているため、元のデータとは単位が変わります。処理時間をミリ秒で測ったなら、分散はミリ秒の二乗です。そこで分散の平方根を取り、元と同じミリ秒という単位で散らばりを表したものが標準偏差になります。
関係は「標準偏差=√分散」「分散=標準偏差の二乗」です。Aの分散は4なので、標準偏差は√4=2ミリ秒。Bは偏差の二乗が16、16、16、16で分散16、標準偏差√16=4ミリ秒となります。二つの指標は関係していますが、答えの数値も単位も異なります。
平方根の計算で「4の平方根は±2」と学んだことがあっても、標準偏差に負の値は取りません。√4は2を表し、散らばりの指標としては0以上の値を使います。全データが同じときは分散も0なので、標準偏差も0です。
また、標準偏差は「各データが平均から必ずその距離にある」という意味ではありません。AとBは説明しやすいよう全件の距離を揃えた特殊な例です。一般のデータでは平均との差は一件ずつ違い、その二乗平均の平方根が標準偏差になります。平均±標準偏差を、全件が必ず収まる上下限として使うこともできません。
設問が「分散を求めよ」なら二乗平均で止まり、「標準偏差を求めよ」なら最後にルートを取ります。逆に標準偏差が3と与えられ、分散を問われたら3²=9です。先に求める量へ印を付けると、計算は正しくても最後の値を取り違えるミスを減らせます。
手計算は表で四つの段階を追う
次は全件が同じ距離ではない例です。データ2、4、4、6の標準偏差を求めましょう。まず平均は(2+4+4+6)÷4=4です。続いて、値・平均・偏差・偏差の二乗の対応を一行ずつ書きます。

| 値x | 平均 | 偏差x−平均 | 偏差の二乗 |
|---|---|---|---|
| 2 | 4 | −2 | 4 |
| 4 | 4 | 0 | 0 |
| 4 | 4 | 0 | 0 |
| 6 | 4 | 2 | 4 |
| 合計 | — | 0 | 8 |
二乗した値の合計は8なので、分散は8÷4=2です。標準偏差は√2で、概数なら約1.414となります。ここで分母は「異なる値の種類」の3ではなく、データの個数の4です。同じ4が2回出てきても、それぞれ一件として数えます。
この例で偏差の絶対値を平均すると、(2+0+0+2)÷4=1です。標準偏差の√2とは一致しません。さらに、偏差を合計してから二乗すると0²になってしまいます。必要なのは一件ずつ二乗してから足す順序です。「二乗した和」と「和の二乗」は別の計算と覚えましょう。
平方根がきれいな整数にならなくても、計算を間違えたとは限りません。選択肢が√2などの根号を残した形なら、そのままで比較できます。小数が必要なら、途中の平均や分散をむやみに丸めず、問題の指定に合わせて最後に丸めます。先に丸めるほど、最終結果にずれが入りやすくなります。
計算を確かめる方法として、「分散=各値の二乗の平均−平均値の二乗」もあります。この例なら(4+16+16+36)÷4−4²=18−16=2です。青山学院大学公開の統計学演習の補足解説で確認できる関係です。最初は偏差の表で意味を理解し、二乗和が既に与えられているときにこの式を使うと整理しやすいですね。
度数表では回数を掛けて計算する
同じ値が何度も出るデータは、値と度数の表で示されることがあります。度数はその値が登場した回数です。たとえば、2が1回、4が2回、6が1回なら、先ほどの2、4、4、6と同じデータになります。行が3本でも全体は4件です。

| 値 | 度数 | 値×度数 | 偏差の二乗×度数 |
|---|---|---|---|
| 2 | 1 | 2 | (2−4)²×1=4 |
| 4 | 2 | 8 | (4−4)²×2=0 |
| 6 | 1 | 6 | (6−4)²×1=4 |
| 合計 | 4 | 16 | 8 |
平均は「値×度数」の合計16を、度数の合計4で割って4です。分散は最後の列の合計8を同じ4で割って2、標準偏差は√2になります。各値を度数分だけ展開して計算する代わりに、同じ計算をまとめているだけです。分母にも分子にも回数を反映します。
なお、ここまでの記事では、提示されたデータそのものの散らばりを表すため、偏差の二乗和をnで割る定義を使っています。別の文脈では、標本から母集団の分散を推定する不偏分散としてn−1で割る場合があります。式が似ていても目的が違うので、問題文が定義や分母を指定していたら、それに従ってください。
「標本だから常にn−1」「基本情報だから常にn」と語だけで決めるより、求める量と提示された式を確認する方が確実です。たとえば先ほどの二乗和8を3で割れば8/3となり、この記事の分散2とは別の値になります。計算機や表計算ソフトで確かめるときも、nとn−1のどちらで割る機能なのかを揃えます。
統計以外も含めて数学の学習範囲を整理したい場合は、基本情報技術者試験で必要な数学の範囲と学ぶ順番も参考にしてください。ここでは標準偏差の計算に必要な、平均・二乗・平方根のつながりを先に固めましょう。
基本情報の標準偏差で加算と倍率を判断する

同じ数を全件に足しても変わらない
データ全体を加工する問題では、最初から全件の標準偏差を計算し直す必要がない場合があります。まず「すべてのデータに同じ数を加える」操作を見ます。8、8、12、12に一律5を足すと、13、13、17、17です。平均も10から15に移ります。
加工後の偏差は13−15=−2と17−15=2で、元の−2と2から変わりません。そのため偏差の二乗も分散も同じで、標準偏差は2のままです。変わるのはデータ全体の位置であり、平均からどれだけ離れているかではありません。
記号で確かめるなら、元の値をx、平均をm、全件に足す数をbとします。加工後の値はx+b、平均はm+bなので、偏差は(x+b)−(m+b)=x−mです。足したbが引き算で消えるため、どのデータでも偏差が変わらないと説明できます。
同じ数を引く操作も、負の数を足すことなので同じ結論です。全件から3を引けば平均も3だけ下がり、標準偏差はそのままです。「値が大きくなったから散らばりも大きくなる」と判断せず、平均も同時にどれだけ動いたかを考えましょう。
全件への定数加算で分散・標準偏差が変わらない性質は、龍谷大学公開の統計学ノート30ページでも整理されています。試験対策では結論に加え、「平均も同じだけ動くから偏差が変わらない」と一文で説明できれば、引く数や加える数が変わっても対応できます。
全件を倍にすると分散は二乗倍になる
次はすべての値を2倍にします。8、8、12、12は16、16、24、24になり、平均は20です。偏差は−4、−4、4、4と元の2倍になるので、二乗した値は16、16、16、16です。分散は16となり、元の4の4倍になります。標準偏差は√16=4で、元の2の2倍です。
ここでは分散の倍率と標準偏差の倍率を分けるのが要点です。全データを3倍なら、分散は3²=9倍、標準偏差は3倍。全データを1/2倍なら、分散は1/4倍、標準偏差は1/2倍です。二乗する工程があるか、そこから平方根を取るかで違いが生まれます。

| 全件への操作 | 平均 | 分散 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|
| bを足す | 元の平均+b | 変化なし | 変化なし |
| 正の数a倍 | a倍 | a²倍 | a倍 |
| 負の数a倍 | a倍 | a²倍 | |a|倍 |
| 0倍 | 0 | 0 | 0 |
負の倍率でも、標準偏差は負になりません。8、8、12、12を−2倍すると−16、−16、−24、−24になり、平均は−20です。偏差は4、4、−4、−4で、向きは逆になりますが距離は2倍です。したがって分散16、標準偏差4となります。
一般に「すべての値をa倍してbを足す」なら、平均はam+b、分散はa²倍、標準偏差は|a|倍です。|a|はaの絶対値で、−2なら2になります。加工後の偏差が(ax+b)−(am+b)=a(x−m)となることから、加えたbが消え、倍率aだけが散らばりに影響すると分かります。
単位の換算もこの考え方で確認できます。秒のデータをミリ秒に直すなら全件を1000倍するので、平均と標準偏差の数値は1000倍、分散の数値は100万倍です。ただし実際の処理のばらつきが悪化したわけではなく、同じ量を別の単位で表した結果です。式の数値と現実の変化を分けて読みましょう。
一部だけの変更には公式を使わない
定数加算の性質が使えるのは、全件に同じ数を加えたときです。特定の一件だけを変える場合や、新しいデータを追加する場合は、同じ操作ではありません。平均からの距離が変わるため、標準偏差がそのままとは限りません。
8、8、12、12の最後の12だけに4を足すと、8、8、12、16になります。平均は44÷4=11。偏差は−3、−3、1、5で、二乗和は9+9+1+25=44です。分散は44÷4=11、標準偏差は√11で約3.317となり、元の2から変わっています。

また、8、8、12、12の末尾にデータ5を一件追加する操作は、全件へ5を足すことではありません。データ数が4から5になり、合計と平均も変わります。もとのデータ一件ずつと新しい平均との差を取り直す必要があります。文章の「加える」が、値の加算か件数の追加かを先に判別してください。
平均だけ分かっても標準偏差を決められない点も注意が必要です。AとBは同じ平均10でも標準偏差が異なりました。同様に、全件の合計が同じという情報だけでは二乗和は決まりません。問題文にデータ・分散・二乗和など必要な条件があるか確認します。
次の順で読むと、使える性質を選びやすくなります。「対象は全件か一部か」「足す・引くか、掛ける・割るか」「求めるのは平均・分散・標準偏差のどれか」を先に確認します。すべての値に共通する変換なら倍率で処理し、一部変更なら元の定義へ戻る、という切り替えです。
独自の例題で計算と性質を確認する
ここからは解説用の確認問題です。答えを見る前に、平均・分散・標準偏差のどれを計算するのかを一行で書いてみてください。数値を出すだけでなく、全件への操作かどうかまで説明できるか確認しましょう。
例題:直接計算。データ1、1、5、5の分散と標準偏差を求めます。平均は12÷4=3。偏差は−2、−2、2、2で、二乗和は16です。よって分散16÷4=4、標準偏差√4=2です。標準偏差を4と答えた場合は、最後の平方根を忘れています。
例題:加工後の値。平均20、標準偏差3のデータの全件を4倍し、各値から7を引きます。新しい平均は20×4−7=73、標準偏差は3×4=12です。元の分散は9なので新しい分散は9×16=144となり、√144=12でも確認できます。7を引く操作は標準偏差には影響しません。
例題:操作の順序。同じデータの各値から先に7を引き、その後4倍したらどうでしょうか。平均は(20−7)×4=52です。先ほどの73とは異なりますが、標準偏差はやはり12になります。平均は加算の順番にも左右される一方、どちらも元の値を4倍して定数を足す変換なので、散らばりの倍率は同じです。

例題:負の倍率。平均6、標準偏差2のデータの全件を−3倍して10を足します。新しい平均は−3×6+10=−8、標準偏差は|−3|×2=6です。分散は元の4の9倍で36になります。「標準偏差は−6」や「標準偏差は4」としたなら、符号や加算を平均と同じように処理していないか見直します。
例題:二乗和が与えられる。データ数5、値の合計30、値の二乗和200のとき、平均は30÷5=6です。分散は200÷5−6²=40−36=4、標準偏差は2となります。二乗和200をそのまま平方根にしたり、合計30の二乗を200から引いたりせず、どちらも平均の形に揃えてから差を取ります。
これらの問題は、確率ごとの結果を重み付けする期待値の計算とは出発点が違います。確率が与えられる場面の平均を復習したい方は、基本情報の期待値を確率を掛けて足す手順で確認できます。標準偏差では、まず今回扱った「手元のデータから散らばりを求める」流れを混ぜずに説明できるようにしましょう。
基本情報の標準偏差は偏差から整理する
基本情報の標準偏差は、平均からのずれを二乗して平均し、最後に平方根を取ると理解できます。偏差は一件ごとの差、分散はその二乗平均、標準偏差は分散の平方根です。計算が止まったら、この三つのどこを求めているのかに戻ると整理しやすくなります。
値を加工する問題は、全件への定数加算なら偏差が変わらず、倍率変更なら偏差も同じ倍率になる、と考えます。分散は倍率の二乗、標準偏差は倍率の絶対値の分だけ変わります。一部だけの変更や件数追加には、そのままこの規則を当てはめず定義から計算し直しましょう。
復習するときは、まず2、4、4、6の表を見ずに作り直し、次に「全件に5を足す」「全件を2倍する」で何が変わるかを説明してみてください。そこで止まった工程だけ復習すると、公式の丸暗記より計算の意味を確かめられます。
計算の流れを説明できたら、基本情報の過去問演習アプリも使いながら、ほかの単元を含めて復習を進められます。この記事の例題は、手元でもう一度式を書いて解き直しておきましょう。


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