基本情報のバックアップで差分と増分を見分けるときは、「どこを基準に変更分を保存するか」を先に確認します。差分は直近のフルバックアップ以降、増分は直前のバックアップ以降が対象です。復元では、差分はフルと目的の時点の差分、増分はフルとそこまでの増分を順番に使います。
名前だけで覚えると、保存量の比較や復元に必要なファイルを選ぶ問題で混乱しがちです。日曜日に全体を保存して、その後どのファイルを更新したかを表にすると、取り違えを減らせます。
この記事では、フル・差分・増分の違いから、保存容量、復元順序、更新を示すフラグの読み方まで、独自に作成した例題で確認します。特定のバックアップ製品の設定手順ではなく、基本情報の学習で方式を判断するための解説です。
- 差分と増分を「変更分を数える起点」で見分ける
- 同じファイルを再更新した場合の保存対象を追える
- 復元に必要な世代と、保存総量を別々に求められる
- 更新フラグ・世代欠落・RAIDとの違いを整理できる
基本情報のバックアップ方式の違い

バックアップは、失ったり壊れたりしたデータを戻せるよう、別に控えを作ることです。保存する処理と、控えを使って戻す処理は分けて考えましょう。保存が短時間で終わる方式でも、復元に必要な材料や手順が多いことがあります。
IPAの基本情報技術者試験シラバスVer.9.2では、ファイルシステムの「バックアップ」で取得方法・手順・世代管理が扱われ、フル・差分・増分が用語例に挙がっています。まずは次の基本形を理解し、問題文に別の条件があればそちらを優先してください。
| 方式 | その回で保存する対象 | 目的の時点に戻す材料 |
|---|---|---|
| フル | 対象データの全体 | 目的の時点のフル |
| 差分 | 直近のフル以降に変更した対象 | 基準のフル+目的の時点の差分 |
| 増分 | 直前のバックアップ以降に変更した対象 | 基準のフル+目的の時点までの増分一式 |
この表の増分は、最初にフルを取得し、その後は増分を続ける一般的な学習モデルです。合成フルや永久増分など、製品側で復元用データを組み直す仕組みは別にあります。方式名だけで実製品の内部動作まで決めつけないことも大切です。
フルは変更の有無に関係なく全体
フルバックアップは、あらかじめ指定した対象を丸ごと保存します。「パソコンの全ディスク」が対象ならその全体ですが、「ある業務フォルダー」が対象ならそのフォルダーの全体です。フルという言葉は、必ずパソコン内のあらゆるデータを含むという意味ではありません。
例えば、A・B・C・Dという四つのファイルがあるとします。月曜日にAだけ編集しても、月曜日のフルにはA・B・C・Dが入ります。変更していないB・C・Dも毎回保存するので、更新が少ない環境では保存の負担が大きくなります。
一方、そのフルが正常に取得されていれば、その時点の対象データを戻す材料がまとまっています。日曜日と水曜日にフルがある場合、水曜日の状態に戻すために日曜日のフルを先に適用する必要はありません。どの時点の控えを使うかを選ぶのが先です。
ただし、フルを取った後に行われた変更は、そのフルには含まれません。水曜日の夜に保存し、木曜日の昼に障害が起きたなら、別の更新記録などがない限り、木曜日の午前中の作業まで戻せるわけではない点に注意しましょう。
差分はフル以降の変更をまとめる

差分バックアップは、直近のフルバックアップから変更された対象を、その回の状態でまとめて保存します。毎日差分を取っていても、比較の起点は前日の差分へ移りません。ここが増分との大きな違いです。
日曜日にA・B・C・Dをフルで保存し、月曜日にA、火曜日にBを更新したとします。月曜日の差分はA、火曜日の差分はAとBです。火曜日にAを編集していなくても、日曜日のフルから見るとAは変更されているので、再び保存対象になります。
火曜日の状態に戻す材料は、日曜日のフルと火曜日の差分です。火曜日の差分の中に月曜日の変更対象も含まれているため、月曜日の差分を挟む必要はありません。「差分だから直前の一日分だけ」と読むと逆になります。
Microsoftの差分バックアップの公式説明も、基準の完全バックアップを戻し、その後に対象の差分を戻す関係を示しています。ただし同資料はSQL Serverの説明なので、エクステントやコピーのみのバックアップといった製品固有の条件は、一般的なファイルの例と分けて読みましょう。
増分は直前からの変更だけを保存

増分バックアップは、直前のバックアップから変更された対象だけを保存します。日曜日にフルを取得し、その後に増分を続けるなら、月曜日は日曜日以降、火曜日は月曜日以降、水曜日は火曜日以降が対象です。比較の起点が一回ごとに進みます。
先ほどと同じく月曜日にA、火曜日にBを更新した場合、月曜日の増分はA、火曜日の増分はBです。火曜日の増分には、月曜日のAが入っていません。そのため、日曜日のフルに火曜日の増分だけを適用しても、Aは日曜日の古い内容のままです。
保存するデータをその期間の変更に絞りやすい反面、復元では変更のつながりをたどる必要があります。「一回の保存を軽くする代わりに、戻すときの材料が分かれる」と考えると、丸暗記に頼らず判断できます。
三方式の基本的な整理は、AWSのフル・差分・増分バックアップ比較でも確認できます。バックアップ時と復元時の負担を別に見ることが、使い分けの出発点です。
同じファイルの再更新を表で追う
ここからは記事独自の練習例です。A・B・C・Dの四つのファイルを日曜夜にフル保存し、月曜日にA、火曜日にB、水曜日にもう一度Aを更新します。削除や追加はなく、毎晩、変更されたファイルをファイル単位で保存するものとします。
| 保存日 | その日の更新 | 差分に入る対象 | 増分に入る対象 |
|---|---|---|---|
| 日曜 | 初回保存 | A・B・C・D(フル) | A・B・C・D(フル) |
| 月曜 | A | Aの月曜版 | Aの月曜版 |
| 火曜 | B | Aの月曜版・Bの火曜版 | Bの火曜版 |
| 水曜 | Aを再更新 | Aの水曜版・Bの火曜版 | Aの水曜版 |
水曜日の差分に、Aの月曜版と水曜版を二つ並べる必要はありません。このモデルでは、水曜時点のAと、フルから変更されたBを保存します。差分は「編集した回数の記録」ではなく、「フル以降に変更した対象の控え」です。
したがって、差分の容量が毎日必ず同じ量ずつ増えるとは限りません。AとBのサイズが変わらず、同じAだけを更新したなら、火曜日と水曜日の差分容量は同じです。毎日違う対象を更新する問題と、同じ対象を繰り返し更新する問題を分けて考えましょう。
増分でも「新しく増えたファイルだけ」を保存するのではありません。既存のAを書き換えた場合も対象になります。削除の反映、ファイル単位かブロック単位か、圧縮や重複排除の有無は製品と設問の条件によるため、指定なしに独自の条件を足さないようにします。
基本情報のバックアップ問題の解き方

方式の違いが分かったら、設問が「何を保存するか」「何を使って戻すか」「どれだけの容量か」のどれを聞いているかを読み分けます。同じ日付表でも、問われる量が違えば答えは変わります。
復元する時点を最初に決める
先ほどの四ファイルの例で、水曜夜の状態へ戻すとします。差分方式なら、日曜日のフルを復元した後、水曜日の差分を適用します。Aは水曜版、Bは火曜版となり、変更していないCとDは日曜日のフルから戻せます。
増分方式なら、日曜日のフル、月曜日の増分、火曜日の増分、水曜日の増分の順です。月曜日のAを戻し、火曜日のBを戻し、最後にAを水曜版へ更新します。この例では、フルを含む四世代を順に使うのが標準の復元手順です。
もし目的が火曜夜の状態なら、水曜日のバックアップは使いません。最新のデータがほしい問題なのか、誤操作の前に戻したい問題なのかを確認してください。「最新だけ使う」という覚え方では、戻す時点を取り違えることがあります。
- 復元したい日時を確定する
- その日時以前で基準になるフルを探す
- 差分なら目的の時点の差分、増分ならそこまでの一式を選ぶ
- どのファイルも目的の版になるか照合する
増分のうち一つのファイルが後日再更新されているからといって、独断で途中の世代を飛ばさないでください。ここで学ぶのはバックアップセット単位の復元です。実製品ではファイル管理情報なども関係するため、特定のファイルだけを取り出せるかどうかと、一式を復元する手順は別です。
一回の容量と保存総量を分ける
容量計算は、同じ対象を重ねて数えるかがポイントです。別の独自例として、全体が100GBで、日曜夜にフルを取得するとします。月曜から木曜まで毎日10GBずつ、前日までとは異なる領域を更新します。全体のサイズは変わらず、圧縮・重複排除は行わない条件です。
| 日 | 毎日フルの場合 | 差分方式の場合 | 増分方式の場合 |
|---|---|---|---|
| 日曜 | 100GB | 100GB(フル) | 100GB(フル) |
| 月曜 | 100GB | 10GB | 10GB |
| 火曜 | 100GB | 20GB | 10GB |
| 水曜 | 100GB | 30GB | 10GB |
| 木曜 | 100GB | 40GB | 10GB |
| 全世代を残す総量 | 500GB | 200GB | 140GB |
木曜日の一回分を聞かれたら、差分は40GB、増分は10GBです。日曜日から木曜日まで保存したバックアップ全体の量なら、差分は100+10+20+30+40=200GB、増分は100+10×4=140GBになります。最初の100GBを入れ忘れないようにしましょう。
一方、木曜夜へ復元するために使用するデータ量は、この条件では差分が100+40=140GB、増分も100+10×4=140GBです。保存総量は違っても、復元で読む量が同じになる例です。差分は二世代、増分は五世代なので、扱う世代数は同じではありません。
ここで出た数値は、すべて例題の前提に基づきます。毎日同じ10GBだけを書き換えるなら、差分は10GBのままという別の結果になります。更新量の数字だけを足さず、更新対象が重複するか、古い世代を残すかまで確認してください。
所要時間は条件をそろえて計算
保存や復元の時間を求める設問では、まず対象となるデータ量を出し、処理速度で割ります。例えば40GBを毎秒100MBで転送し、1GB=1,000MB、準備時間は無視すると指定されているなら、40×1,000÷100=400秒、つまり6分40秒です。
同じ条件で10GBなら100秒です。ただし、これは転送だけの計算です。バックアップ開始前の検査、ファイル検索、暗号化、媒体交換などの時間を含めると指定されていたら、その条件も式へ加えます。GBとMBの換算は問題文に合わせ、1,024倍を使う指示を1,000倍に変えないようにします。
復元時間では、世代ごとの準備時間が効くこともあります。先ほどの140GBを毎秒100MBで読み、一世代につき準備に60秒必要だと仮定すると、差分は1,400+60×2=1,520秒、増分は1,400+60×5=1,700秒です。ここでも数値は説明用の仮定であり、製品の実測値ではありません。
「増分はいつも復元が遅い」「フルなら必ず何分で戻せる」と断定するのではなく、試験では与えられた世代数・容量・速度から比較します。実際の所要時間は構成によって変わるため、方式名だけで数値は決まりません。単位換算が不安な場合は、基本情報のデータ転送時間とMB・Mbpsの計算で先に整理できます。
途中の増分が欠けるとどうなるか

日曜にフル、月曜から水曜まで増分を取ったのに、火曜日の増分だけ読めなくなったとします。通常の増分チェーンでは、水曜日の増分が無事でも、水曜夜の状態全体へ正しく戻せるとは限りません。火曜日に行った変更が、その後の増分には含まれないことがあるからです。
正常な日曜日のフルと月曜日の増分があれば、月曜夜の状態まで戻す選択肢はあります。どこまで戻せるかを考える際は、欠けた世代より前で、必要な材料がそろう最後の時点を探します。ただし個別製品での救出可否を保証する説明ではありません。
差分の場合は、例えば火曜日の差分が読めなくても、同じフルを基準とする正常な水曜日の差分があれば、水曜時点への復元に火曜日の差分は不要です。一方、基準のフルが失われると、そのフルに依存する差分も単独では全体の代わりになりません。
世代を整理する問題でも、「古いから全部消す」とは考えないでください。古いフルを消すなら、それに依存する差分や増分も影響を受けます。新しいフルと必要な更新分で、要求された復元時点を再現できることを確認してから保持対象を判断します。AOMEIのバックアップ方式のヘルプにも、基準となるフルと更新分の依存関係が説明されています。
更新フラグは保存後の変化を見る
問題文に「ファイルの更新を示す情報」が登場したら、保存対象を選ぶ条件と、保存後にその情報を消すかどうかを分けて読みます。ここでは、更新したら印が付き、指定された操作で印が消える単純な仕組みを考えます。これは設問を解くためのモデルであり、すべての製品が同じ印を使うという意味ではありません。
フルを取って全ファイルの印を消した後、月曜日にAを更新するとAに印が付きます。月曜日のバックアップで印のあるAを保存し、その印を消せば、火曜日に新たにBだけ更新したとき、印があるのはBだけです。この動作は、直前のバックアップ以降の変更を取る増分の考え方と対応します。
反対に、月曜日にAを保存しても印を残すなら、火曜日にBを更新した時点でAとBに印があります。その二つを保存し、印を残し続けるなら、フル以降の更新対象が累積する差分の考え方に対応します。印の有無に関係なく毎回全対象を保存する選択肢は、フルとして判断できます。
| 選択肢で見るところ | 考え方 |
|---|---|
| 全対象を無条件に保存 | フルの動作 |
| 更新印のある対象を保存し、印を消す | 次回は新たな変更だけを選べる |
| 更新印のある対象を保存し、印を残す | 同じ基準からの変更対象が残る |
暗記だけで選びにくいときは、AとBの二ファイルで二日分を追ってください。特に「保存後に印を消す」の否定を読み落とすと、保存対象は同じように見えても翌日の動きが変わります。仕組みが明記されている問題では、その説明に沿って判断するのが確実です。
RAIDとの違いと復元テスト

RAIDの冗長化とバックアップは目的が異なります。例えばミラーリングでは同じ内容を複数のディスクへ書きますが、利用者が誤って削除した操作も反映されます。別の時点へ戻すための控えを持つバックアップとは、守れる状況が違います。詳しい構成は基本情報のRAID0・1・5・10の違いで確認できます。
差分か増分かは「何を保存するか」の分類です。保存先を本番機と同じ場所に置くか、別の機器や場所に分けるかは別の判断になります。同じ装置の故障や、同じ権限からの削除で控えまで失う構成なら、方式を選んだだけでは復旧の備えは十分ではありません。
警察庁のランサムウェア被害防止対策では、バックアップも暗号化される事例を踏まえ、ネットワークから切り離すなどの備えと、復旧手順の訓練を案内しています。バックアップの方式と保存先の保護をセットで理解すると、用語が実際の目的につながります。
また、「バックアップが終了した」という通知だけで、必要なデータが戻るとは限りません。対象が漏れていないか、目的の世代を選べるか、復元先でファイルを開けるかを確認する必要があります。学習用に試す場合も、元の重要データを上書きせず、別の場所へ戻して確認するという区別を持ちましょう。
確認問題で取り違えを見つける
次の三問はこの記事独自の確認問題です。方式名だけでなく、そう判断した理由を一文で説明してみてください。すべて、フルの後に差分だけ、または増分だけを続ける通常のモデルを前提とします。
- 日曜にフル、月曜にA、火曜にBを更新して毎晩保存。火曜の保存対象がAとBなら、方式は何か
- 日曜にフル、その後月曜・火曜に増分を取得。火曜夜へ戻すとき、日曜と火曜だけで足りるか
- 同じサイズのAだけを毎日上書き。フル以降の差分容量は、編集回数に比例して必ず増えるか
一問目は差分です。火曜日の保存対象に、火曜日には編集していないAが含まれるからです。比較の起点が日曜日のフルから動いていません。二問目は足りません。月曜の更新を戻すため、月曜の増分も含めて適用します。
三問目は「必ず増えるわけではない」です。このファイル単位の例では、Aの最新の内容を差分に保存し、サイズも同じなので容量は一定です。保存回数と、一世代の中に入る対象数を混ぜないようにしましょう。間違えた問題は、日付・更新した対象・保存対象の三列を自分で書くと理由を確認できます。
基本情報のバックアップの要点
バックアップ問題は、変更分の起点を決め、日付順に保存対象を書き出すと整理できます。差分はフル以降の変更対象をまとめ、増分は直前からの変更対象を分けて保存します。復元では、目的の時点と必要な世代をセットで確認してください。
容量は「その回に作る量」「残している全世代の総量」「復元で使用する量」を区別しましょう。更新対象が重なるかどうかも重要です。まずは四ファイル・三日分の例を何も見ずに書き直し、保存対象と復元順を説明できるか試すところから始めると、理解を確かめやすくなります。


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